一目ぼれして38年同じ部屋 ~ドナルド・キーンの東京下町日記 [東京新聞]
- ドナルド・キーンさんは、半世紀以上も前の1953年に京都大学に留学。ニューヨークのコロンビア大学で教えるようにっても、留学時代の古い日本家屋で夏を過ごす日米二重生活だった。しかし、1960年頃に新幹線工事で景色が台無しになり、思い切って東京に出た。
- 東京では、自ら英訳した太宰治の『斜陽』に出てくる文京区西方を選んだ。近くに白山の花街が残り、風情もあった。コツコツと貯めたドルを円に換えてマンションを買ったが、騒々しい通りと消防署のサイレンに悩まされた。そんな時、北区西ヶ原の旧古川庭園を友人に教えられ、訪ねた。すてきな庭園の近くに白いマンションを見つけ、一目ぼれした。2年待って空いた部屋を買った。
- それから38年住み続けている。日本好きのキーンさんにとって、安永年間の石碑が残る町並みも気に入っている。以前は自室から見えた旧古川庭園の池が、周囲の木が伸びて見えなくなったことだけが残念。「池の木は夜にこっそり切ってやろうか―と時々考えている」。
コメント 0