守った景観、自治か独裁か [東京新聞]
- 東京都国立市のJR国立駅からまっすぐに延びる桜と銀杏の並木道は、昭和初期に住民が植樹したのが始まりであり、「自治」のシンボルでもある。元市長の上原公子さんは在任当時、建物を並木と同じ高さに制限する条例を定めた。そのことで今、市から3000万円払えと訴えられている。
- 上原さんは、駅前の高層ビル建設と景観をめぐる住民たちの裁判に加わり、1999年には市長選に当選した。7万人近い署名が集まり、上原市長は条例づくりに動いた。「独裁」の批判を浴びても、国立の自然環境を守るという信念はぶれなかった。第三者機関の審議会の可決を経て条例は議会で成立した。しかし業者は条例は無効として市と市長を訴え、2009年に東京地裁は「強引に政策を変更した行為は違法」という判決を出した。
- 政治家は、選挙を通じて託された民意を政策にとして実現することが求められる。ただ、多数の同意があっても、不利益を感じる人もいる。政策実現のために生じた不利益は、住民全体で責任を負う、つまりは税金で補填するのが民主主義の本来の姿のはずだ。「政治は中立ではいられない。変革が求められる今の時代はなおさら。政策の継続性が求められるだけなら、選挙の意味がない」と上原さんは語る。それは国立の景観に惚れ込んだ「市民」としての意地でもある。
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